2017年10月9日
noteに掲載
今福島駅に停車中の郡山行きの電車の中からスマホのメモにこの記事を書いている。時刻は朝の9時12分だ。早朝、山形の新庄から電車に乗り、足利の自宅に向かっている。
今日まで三連休なのである。ぼくはすこし前から秋田に行きたいなぁと思っていたので、この機会に秋田に行ってきたというわけだ。
移動手段は鈍行列車にした。自転車では時間がなさすぎる。クルマも考えていたが、近いうちに車両を変えるので遠出は控えた。
あとは泊まる場所の確保である。わたしは火曜日にネットでホテルを探していた。秋田駅周辺のホテルはすでに埋まっており、どこも予約できなかった。ネットカフェに泊まることも考えたが、昼間すわりっぱなしで夜もすわりっぱなしではよくない気がした。場所をずらそうと思った。
秋田よりさらに北の大館ではホテルが空いていた。しかもリーズナブルだ。土曜日は大館に泊まることにした。帰路はゆっくり南下しようと思い、日曜は山形の新庄でホテルがとれた。これで準備はオーケーだ。行きと帰りの経路が違うのも飽きがこなくてよい。行きは新潟回り、帰りは福島回りだ。
というわけで10月7日土曜日、わたしは6時過ぎの電車に乗り込み足利を発った。まずは新潟へ。このルートは昨年末も乗っているので馴染みがある。まだ秋なので雪は見られなかった。上越線はなかなか scenicな路線だと思っているが、今回伊勢崎駅から suicaで入場していたために、車内精算で車掌とすこしやりとりをすることとなった。suicaの残額が若干足りず、大館まで精算はできないと言われてしまった。不足分を現金で補うことはできないらしい。全額 suicaもしくは全額現金でしか受け付けないと繰り返し言われた。現金いくら持ってるんですかなどと問い詰められ、ぼくは静かに怒った。結局秋田駅まで suicaで精算してもらい決着した。このあたり青春18きっぷは無敵だが、今は販売期間ではない。
そうこうしているうちに新潟に着いた。売店でホットケーキ風菓子を買ってほおばる。白新線で村上を目指す。途中で新発田を通過する。新発田は会社の先輩の出身地だ。ここかー、写真でも撮ろうかななどと思いつつ通り過ぎた。
お昼時だが村上駅には売店はなかった。羽越線で山形の酒田を目指す。日本海を眺めながら北上、列車旅のいい場面だ。酒田駅にも売店はなかったが、お菓子の自販機はあったのでミニチョコあんぱんを買ってその場で食べきった。うまいが量が全然足りない。
秋田行きの電車に乗り継ぎ。夕暮れどきとなる。天気は曇りだったが、遠くのほうは雲がなく、途切れ途切れに夕陽が見え、最後はくっきりと姿を現した。日本海に沈む夕陽とは見ものだ。素晴らしかった。
6時半ごろ秋田駅に着いた。いったん降りる。夕飯を食べようと思った。西口から飛び出して街を歩いてみる。意外とパッと入れそうなレストランがない。駅のほうに引き返し、百貨店の地下にあるレストラン街でとんかつを食べた。腕のある店なのか、かなりおいしくいただけた。百貨店に入っているのに個人店の雰囲気が濃厚なのもいい。
8時半ごろ大館行きの最終電車に乗る。窓の外は暗闇でなにも見えない。10時すぎに大館に着いた。ホテルまですこし距離があり、20分ほど歩く。ホテルに大浴場があるのが救いだった。12時ごろ寝た。早起きなどすまい。
(記事を書いているうちに列車は動き出し、今はまた乗り継ぎで郡山駅にいる) 8日日曜日は7時半すぎに起きた。8時に朝食におりた。前の日は朝食抜きだったのでこの日はしっかり食べる。ご飯を食べてパンも食べる。部屋に戻って昨夜録りそこねたラジオを録り、チェックアウト時間までゆっくりしていた。
大館の街を歩いてみる。公園で噴水を見ながらたたずんでみる。川辺を散歩してみる。大通りの店舗を見ながら駅へ向かう。駅で新庄までの切符を買う。ランチのできる場所を探すが、駅前には見当たらず、少し戻って緑の看板のハンバーガーチェーンで食べた。
駅の喫煙所で一服つけてから駅に入る。秋田行きの電車に乗る。平野が広がる。田んぼだ。昨夜真っ暗だったのも無理はない。
3時ごろ秋田に着いた。新庄行きの電車の出発まで1時間半以上の待ち時間があり、これはチャンスと途中下車した。駅前のビルにある本屋でじっくり本を探す。お目当ての外国文学の本はない。あちこちの書棚をぶらつく。坂口恭平さんの『TOKYO 0円ハウス 0円生活』を購買した。
新庄行きの列車に乗る。ぼくはずっと本を読んでいた。あまり外を見なかった。新庄に着くころに本を読み終えていた。ぼくは大学1年のころにソローの『森の生活』に出会ってからというもの、ずっと self-builtな人生について思いを巡らせ続けていたが、坂口さんのこの本もまた、self-builtな人生にたいする情熱がほとばしっていた。
駅前の喫煙所で一服つけてから、夕飯を食べようと歩きはじめた。交差点の角に定食屋を発見し、ガラガラと戸を開けて入った。ビールと牛丼を注文する。瓶ビールはそれなりに量があり、ぼくは酔った。つまみがほしくなり餃子を頼んだ。うまかった。しかし酔った。トイレに行きたかったのに店を出てしまったので、コンビニに寄って用を足し、翌日の朝食を買っておいた。
ホテルは歩いてほどないところにあり、鍵をもらい部屋にあがる。しばらく酔ったままだったが、10時ごろシャワーを浴び、11時ごろ寝た。寝るころから頭痛がしていた。
そして9日月曜日、つまり今日だが、4時40分にスマホのアラームによって目覚めた。頭痛がなおらず、むしろ悪化している。風邪か?とにかく朝食をとり、トイレに行き、荷物をまとめホテルをあとにする。外は寒く感じた。
駅でまたトイレに入る。急いで米沢行きの電車に乗る。まどろむ。朝日が差してくる。サングラスをかける。景色に山が増えてくる。自転車レースでも有名な蔵王を通過。
米沢で乗り継ぎ。福島へ向かう。本格的な山岳地域となる。自転車なら面白そうだ。福島まで無人駅が続く。ちらほら紅葉も見える。
福島では待ち時間があったのでトイレに入った。朝から体調はよくない。途中下車してもよかったが、あまり気力もなく車内で待つことにした。
(今白河を過ぎた) まだ自宅には着いていないが、おやつの時間には足利に着くだろう。ぼくはきっと死に場所を探していたのだ。自分を弔う場所を探していたのだ。そのような場所を秋田や山形に見つけることはできなかった。秋田や山形はぼくにとって、もっと好ましい場所に思われた。ひとは好きな場所でしのうなどとは、元気なうちは思わないはずだ。
ここじゃない、ここじゃない、しぬのはここじゃない。本当に死ぬときは場所を選ぶな。今は生きて輝け、ぼくよ。